about

ITSE

MIKU FUKAMITSUが展開する直営店<ITSE>のための空間設計。

MIKU FUKAMITSUは、自然の流れや現象に着目し、素材と感覚の関係性を探るジュエリーブランドです。<ITSE>はその世界観を空間として体現する直営店であり、「自分自身」という意味を持つ名のとおり、感覚をひらき、静かに向き合うための場所として設計しました。
店内ではジュエリーに加え、国内外からセレクトした雑貨や、生活に寄り添うプロダクトが並びます。それらはすべて、部分的にMIKU FUKAMITSUと共鳴する価値観によって選定されています。
この空間では、「見る/触れる/選ぶ」という行為に意識が向かうよう、余計な情報を抑え、ひとつひとつの選択に集中できる構成としています。素材は最小限に絞り、露出された躯体と繊細な造作との対比によって、空間に程よい緊張感を与えています。
床は一部を一段上げ、着席時に天板が通常のテーブル高さになるように計画しています。マリッジリングの打合せなど視線が交差する場面と、立ったまま適切な距離感で商品を見る場面とを、床の高低差によって自然に分けています。
天井の照明にはアクリル板をシェードのように吊るすことで、光源の存在を抑えつつ、空間全体に均質な明るさをもたらしています。壁面には半透過のアクリル板を用い、外光をやわらかく取り込みながら、直射を避けて拡散された光が空間に穏やかさと視覚的な広がりをつくり出します。
壁面のミラーは、照明やカウンターを断片的に映し出し、空間に実際以上の奥行きを与えています。そこにふと自身の姿が映り込むことで、感覚的な“自己の輪郭”が現れます。
中央に配置した椅子は、この空間のためにデザインしたものです。あえて背もたれを低く設計することで、座ったときに自然に姿勢が整い、落ち着きつつ対話へと意識が向かう空気を生み出します。木部はカウンターと同じ塗装色、張地も内部に用いたスエードと揃え、空間全体との統一感を持たせています。使用されていない時間でも空間を引き締める存在として、構造的にも視覚的にも機能しています。<ITSE>は、物を選ぶという行為を超えて、感覚そのものを整える場として構成されています。光や素材、密度を丁寧に調整することによって、そこに滞在する時間の質が記憶としてゆるやかに残るように設計しています。

2025.03
type : interior,furniture
place : taito-ku
client : ITSE  @itse_tokyo @mikufukamitsu
design : saiku
Construction : saiku
photo : 1-13 hiroki yumoto @hiroki_yumoto
             14-19 kohei tahara kohei tahara